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借りたくても借りられない!2026年春の賃貸物件不足、その本当の理由

賃貸契約


「部屋を探しているのに、全然見つからない……」
2026年の春、そんな声がかつてないほど多く聞こえてきました。希望のエリアで検索をかけても出てくる物件は少なく、「これだ」と思って問い合わせれば「すでに申し込みが入っています」。内見すら予約できない——そんな経験をした方も少なくないのではないでしょうか。
「物件に入れない」「なぜこんなに部屋がないのか」。その疑問を持つ人が急増しています。
では、なぜここまで物件が「消えて」しまったのか。2026年春の賃貸物件不足の背景と構造的な理由、そして現状の打開策を、データをもとにわかりやすく解説します。記事の後半では、こんな時代だからこそ活用したいお得な部屋探しの方法もご紹介します。



目次
1.「いつもより3ヶ月早い」
2.なぜ物件が足りない?
3.割を食うのは誰か
4.打開策はあるか?
まとめ——物件不足の時代を賢く乗り越えるために



1. 「いつもより3ヶ月早い」



繁忙期が、前倒しになっている
不動産業界では例年、1月〜3月が「繁忙期」とされています。4月からの新生活に向けて、進学・就職・転勤を控えた人たちが一斉に部屋探しを始め、物件の回転が最も速くなる時期です。物件数は豊富になる反面、競争が激しくなるため「内見したその日中に申し込みを決断する」ようなスピード感が求められます。
しかし2026年春は、例年と明らかに様相が異なりました。前年の秋ごろから「もう物件が少ない」「早く動かないと何もなくなる」という声が現場から上がり始め、企業の社宅担当者が通常より2〜3ヶ月前倒しで物件確保に動き出すケースが続出しました。
個人の動きも同様で、12月下旬から「いつ部屋探しを始めればいいですか?」という問い合わせが急増。ある不動産会社では、前年同期比で相談件数が約1.3倍に増加したといいます。「翌日には埋まっていた」という声が相次ぎ、2月になると掲載された物件が数時間で消えるケースも珍しくなくなりました。


なぜ今年は特に早いのか
「早く動かなければならない」という焦りが市場全体に広がった背景には、供給と需要の両面における「二重の異変」があります。
需要側では、住宅価格の高騰で「マイホームを断念した層」が賃貸市場に大量流入しています。東京23区では新築マンションの平均価格が1億円を超え、ファミリー層を中心に「購入断念→賃貸継続」という選択が急増。賃貸需要が底堅いまま高止まりしているのです。
供給側では、新築賃貸住宅の着工が大幅に減少しており、市場に出回る新しい物件の数そのものが年々縮んでいます(詳しくは第2章で解説します)。
これら2つの力が合わさり、「良い物件は年明け前から動かないともう残っていない」という状況が2026年の標準になってしまいました。かつては「1月中に動き出せば十分」とされていたのに、今や「前年12月に動き始めて当然」という時代に変わりつつあるのです。



2. なぜ物件が足りない?


62年ぶりの「着工最低水準」
供給側から見ると、状況は深刻の一言に尽きます。
国土交通省の発表によると、2025年の新設住宅着工戸数は前年比6.5%減の74万667戸。これは1963年以来、62年ぶりの過去最低水準です。持ち家・貸家・分譲住宅のすべてが減少し、全体で3年連続のマイナスを記録しました。
賃貸住宅(貸家)に限っても前年比5.0%減の32万4,991戸と、3年連続のマイナス。この傾向は2026年も続くと見られており、新しい物件の供給が増える見込みはしばらくありません。


なぜ建てられないのか?——3つの構造的な原因
① 建設コストの異常な高騰
ウッドショック・ウクライナ情勢による資源高・円安・燃料費高騰が複合的に重なり、この5年間で建設コストは26〜30%も上昇しています。「建てたくても採算が合わない」と判断して新築賃貸の計画を見送るオーナーが急増しています。

② 建設業の深刻な人手不足
2024年から適用された時間外労働の上限規制に加え、熟練技術者の大量退職が重なり、「建てたくても人手が足りない」「工期が大幅に延びる」という現場の詰まりが全国で起きています。大手・中堅建設会社の約7割が2026年度内は大型工事を新規受注できない、という調査結果もあります。

③ 賃貸用の適地不足と利回り低下
そもそも、賃貸住宅を建てられる土地自体が都市部で枯渇してきています。金利上昇も賃貸利回りの低下に直結し、「建てない」判断が投資の合理的な選択になっているのが実情です。


「買えない人」が賃貸市場になだれ込む
一方、需要側では「マイホームを諦めた層」の流入が加速しています。
住宅価格の高騰で家を買えない世帯の多くは、当然ながら賃貸市場に流れます。特にファミリー向け物件では、購入を断念した共働き世帯の需要が継続しており、都市部の空室率は緩やかに低下し続けています。
さらに、単身世帯の増加・未婚化・高齢化による「一人暮らし世帯」の増加が、賃貸需要を構造的に押し上げています。「少子化なのに部屋が足りない」という逆説は、ここから生まれています。
供給が縮み、需要が膨らむ。これが「なぜ物件に入れないのか」に対する、シンプルな答えです。



3. 割を食うのは誰か

物件が少なくなると、市場は残酷なほど「選別」を始めます。競争が激しくなるほど、もともと住まいを確保しにくかった人たちへのしわ寄せは大きくなります。審査が通りやすい人と通りにくい人。借りられる人と借りられない人。その格差は、物件不足の時代にいっそう広がっています。


新社会人・学生
例年の部屋探しの主役である新社会人や進学する学生は、2026年春に最初の煽りを受けました。
この層は構造的に動き出しが遅くなりがちです。「内定・合格通知を受けてから部屋を探す」という流れが一般的なため、どうしても本格的な活動が1〜2月以降になります。しかし現在の市場では、「遅くとも1月中には動き出さないと、条件に合う物件が減ってしまう」というのが専門家の共通見解です。
「3月に動き始めたら希望に合う物件はほぼ残っていなかった」「内見の予約すら取れなかった」という声は今や珍しくありません。特に大学周辺の人気エリアや、都心への交通の便が良い駅近物件は、年が明けた時点でほぼ埋まってしまっているケースもあります。
「部屋を探し始めたら、もう何もなかった」——その言葉の重みが、2026年の春には現実味を増しています。


高齢者
物件不足の市場で、もっとも過酷な立場に置かれる層のひとつが高齢者です。
オーナーが高齢者入居を敬遠する理由は、孤独死のリスク・認知症によるトラブルへの懸念・保証人や緊急連絡先が見つかりにくいこと——などさまざまです。さらに近年は保証会社の審査が厳格化し、「75歳以上は審査対象外」とするケースも出てきています。
物件に余裕があった時代なら「しかたなく」受け入れることもありましたが、選べる立場になったオーナーはリスクの低い入居者を優先します。高齢者は最初にふるい落とされる——その構図が物件不足でいっそう強まっています。
高齢者のみの世帯や単身高齢者世帯の数は増え続けており、2030年には800万世帯に迫る見通しです。問題は今後さらに深刻になっていきます。


外国人労働者
日本の労働力不足を支えてきた外国人労働者も、賃貸市場での苦労は続いています。
日本語でのコミュニケーションへの不安、書類手続きの複雑さ、生活習慣の違いへの懸念——これらが壁となり、収入や仕事の安定性に問題がなくても審査に通らないケースが後を絶ちません。「仕事は決まっているのに、住む場所が決まらない」という理不尽が今も続いています。
物件不足の市場では、競争が激しくなるほど「審査が通りやすい人」が優先されます。正規雇用・日本国籍・若年・保証人あり——という条件を満たす人が圧倒的に有利な市場において、そこから外れた人には「探す権利はあっても借りられる現実がない」という矛盾が生まれています。
「物件に入れない。なぜ?」という問いへの答えは、需給の問題だけではなく、こうした社会的な構造にも深く根ざしています。



4. 打開策はあるか?


900万戸の空き家を"資源"に変える
「部屋が足りない」と言われる一方で、日本には使われていない住宅が大量に眠っています。
「足りない」と「余っている」が同時に存在するこの矛盾を解消するのが、空き家活用です。2026年には空き家対策特措法の運用がさらに強化され、放置すれば固定資産税が最大6倍になる可能性が生まれました。これにより、これまで動かなかったオーナーが活用や売却に踏み切るケースが増えることが期待されています。
自治体レベルでも具体的な成果が出始めています。空き家を賃貸住宅として登録したオーナーに最大250万円の改修費補助を行う市町村も登場しており、東京都内でも築40年の木造住宅を200万円でリノベーションして月8万円で賃貸に出し、2年で初期投資を回収した事例があります。
ただし、「眠れる900万戸」を市場に戻すには、リノベーション費用と時間がかかります。また、空き家の多くは地方や郊外に集中しており、都市部の需要を直接満たすには限界もあります。即効薬ではなく、中長期的な取り組みと理解する必要があります。


テクノロジーが「部屋探しの非効率」を変える
物件数が絶対的に少ない時代には、限られた物件をいかに効率よくマッチングさせるかが重要になります。ここでAIとDX(デジタルトランスフォーメーション)が力を発揮しています。
VR内見の普及により、遠方から進学・就職する人が現地に足を運ばずとも物件を絞り込める環境が整いつつあります。大手不動産各社が三次元バーチャル内覧や仮想ステージング(空室に家具をCGで配置するサービス)を導入しており、「とりあえず現地に見に行く」という非効率が解消されつつあります。
AIチャットボットによる24時間対応は「夜中に問い合わせたのに翌朝まで返答がなかった間に他の人に申し込まれた」という機会損失を防ぎます。
オンライン申込・電子契約の普及も、物件確保のスピードを上げる効果があります。スマートフォン一台で申し込みから契約まで完結できるサービスも登場しており、繁忙期の「書類を持って不動産会社に来てください」というボトルネックが解消されつつあります。
これらのテクノロジーは、物件の数そのものを増やすわけではありません。しかし「限られた物件を、必要な人のところへ素早く届ける」効率を高めることで、体感としての物件不足感を和らげる効果があります。


「借りにくい人」を社会全体で支える居住支援
テクノロジーや空き家活用は、主に供給・流通側のアプローチです。一方、「属性で弾かれる人」の問題は、社会的な仕組みで解決するしかありません。
東京都千代田区では、賃貸住宅オーナー向けに高齢者入居物件を対象とした孤独死保険「家主サポート保険」が始まりました。オーナーが高齢者入居を拒む最大の理由のひとつである「孤独死リスク」を保険でカバーし、受け入れのハードルを下げる取り組みです。
外国人受け入れに特化した不動産会社では、多言語スタッフの採用や文化的な背景を踏まえた生活ルールの説明・覚書の作成など、オーナーと入居者双方の不安を取り除く仕組みを地道に積み上げています。実際に外国人のトラブル発生率は1.5%と低いにもかかわらず偏見が先行している現状を変えるため、不動産会社やオーナーへの啓発活動も進んでいます。
制度面では「居住サポート住宅」の普及や、分野横断的な連携による居住支援の充実が政策課題として掲げられています。「住まいを社会インフラとして守る」という視点での取り組みが、少しずつ形になりつつあります。



まとめ——物件不足の時代を賢く乗り越えるために
2026年春の賃貸物件不足は、単なる繁忙期の過熱ではありませんでした。
供給側と需要側、この二重苦が重なり、「借りたくても借りられない」状況が構造的に生まれています。また、その影響は新社会人・高齢者・外国人といった、もともと住まいを確保しにくい立場の人々により大きくのしかかっています。
空き家活用・DX・居住支援という打開策は動き出してはいますが、いずれも中長期的な取り組みであり、すぐに市場が好転するとは言い切れません。
このような状況だからこそ、早めに動くこと、そして同じ部屋を借りるなら初期費用を1円でも安く抑えることが、部屋探しの成否を分ける重要な鍵になっています。

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  • 執筆監修

    趙暉士(ちょうきし)|宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、管理業務主任者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

    賃貸リーシングとコンサルタントを経験し、後に売買仲介業務に従事。

    (株)大京穴吹不動産、都心営業部、渋谷店、流通営業1課

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